日日平安

再開しました

 『奇貨居くべし』 宮城谷昌光

6年にわたって雑誌に連載された作品とのこと。宮城谷氏の端正な仕事は連載形式によく合うと思った。淡白ではあるが、端々まで隙がなく、しずかな緊張感を持って全5巻を一気に読んだ。わたしにとっては、疲れたときにでも読め、かつ楽しませてくれる癒し小…

 『わたしを離さないで』 カズオ・イシグロ

なぜか、わたしのなかでは少し前に読んだ「闇の左手」と綺麗に対をなした。つまり、輪郭はあるが、核心がないということになるだろうか。腹の中に熱い石を抱えていたような「闇の左手」に対し、「わたしを離さないで」は石だらけの道を素足で歩いているよう…

 ウィキッド(劇団四季)

誰も知らない、オズのもうひとつの物語。 オズと聞いてなんとなくきゅんとしてしまう人や女の子のための物語。ドロシーに倒される西の悪い魔女が、どうして悪い魔女になったのか、という物語。「オズの魔法使い」のラストでエメラルドの都の裏の顔が明かされ…

 2009年3月

映画14本観たわけだけど、(体調を崩したせいもあるけど)正直心が折れた。。最近映画ライターなどの評がすごいつまんないなと思っていて、それはこういうわけかと思う。たくさん観て、ひとつひとつ咀嚼しては吐き出して、なんてことをやっていると死んでし…

 『歌行灯・高野聖』泉鏡花

泉鏡花は繰り返し読むほどに、味の出てくる作家だ。文体は慣れるまで読みづらいが、わりと慣れる。今回この本を読むのは3回目でほぼすらすらと読めたものの、作品によっては部分的に引っかかってしまう。だいたいにおいて、主語が掴みづらい。それを差し置い…

 キャッツ(劇団四季)

オープニングでいきなり泣いた。ちょっと身体がびっくりしたようだ。最近感度がよくなっているなあと思う。かといって不安定ではなくいい感じ。わたしは今まで何かを観たり聴いたりして、そこから感じたことを言語化して満足していたけれど、脳みそだけじゃ…

 『カツラ美容室別室』山崎ナオコーラ

※文藝掲載のものを読みました。正直、これを本にするのかーと。量的に。あと2編ぐらい入れればスカスカとか言われないかもしれない。キュッとしたいです。キュッと。(ナオコーラさん的キメ台詞を)行開けしちゃうのはキメっぽいだけに格好悪く感じます。絶…

 2009年2月

風邪を引いて、中ごろはいろいろお休み。闇の左手がとにかく素晴らしかった! 映画はゲバラ。それから「落下の王国」。映画館で観ればよかった! 素晴らしい映像美もさることながら、音楽も役者もいいし、ファンタジー部分は完ぺき、とはいないけれど、現実…

 『闇の左手』 アーシュラ・K・ル・グィン

一言で言うと、”奇妙な”小説だ。掴みどころがない、というより、輪郭がない。ぼやけた二つの影のような塊が、風雪のなか、ただ白い世界を移動している。核心は常にある。愛に似ているが、それをそのまま愛と呼んでいいのかわからない。両性具有の異星人であ…

 『蒼穹の昴』浅田次郎

面白くなってきたと思うとすぐに場面転換してしまい、全体的に気分が盛り上がらないまま終わってしまった。ディテイルは面白いのだけど。。主人公ふたりだけに絞っていたらもう少し入り込めたかも。天上人の描き方がわたしにはしっくりこなくてこれは致命的…

 『駅前旅館』井伏鱒二

あまり上手い言葉が思いつかないのだけど、とにかく面白かった。わたしが井伏鱒二を好きなのは、陽気さと切なさのバランスが絶妙で、笑いながら目のはしで泣いてしまうようなところ。こういう心地の良い軽妙な文芸小説を読める機会は意外と少ないように思う…

 2009年1月

正月ボケ、暇のようで、せわしい一月。あっというまでございました。「4ヶ月、3週と2日」は凹んだ。ルーマニア、チャウシェスク政権下では、避妊も中絶も禁止されており、ひとりの女子学生の中絶をめぐる一日の物語。女子には重い命題である。中絶という…

 『空中ブランコ』奥田英朗

サーカスとヅラの話を読むかぎりでは、前作より数段面白くなっており、これはずっと書いて欲しいなと思ったのだが、最後の「女流作家」を読んで少々不安に。ネタを探すのが大変そうだ。空中ブランコ (文春文庫)作者: 奥田英朗出版社/メーカー: 文藝春秋発売…

 モーム短編集/アムステルダム

 『アムステルダム』 イアン・マキューアン

ある意味、アムステルダムというタイトルがすべての作品だが、皮肉にもアムステルダムがアムステルダムであるがゆえに、傑作になりえなかった作品ともいえる。中盤、物語が転換を迎える場面で、”友情の不均衡”という言葉が出てきたとき、思わすクスリと笑っ…

 『雨・赤毛』 サマセット・モーム

カーシュと続けて読んだら、どちらも短編集のせいか(他にもいろいろ共通点があり)、なんだか似ていた。余談だが、カーシュの中には宮沢賢治のとある童話そっくりの話があった。収録作は雨・赤毛・ホノルル。すべて南洋を舞台にした作品だ。赤毛、ホノルル…

 『怪人二十面相』 江戸川乱歩

少年探偵団シリーズの記念すべき第1巻。全26巻ですって。うっかり集めそうになり、いやいやいや図書館で借りてこよう…と自分を諌め中。この面白さっていうのは、謎解きの面白さではなくて、小林少年のほっぺだったり、妙にインパクトのあるピッポちゃんだっ…

 2008年総括

今年はサクッと。※順不同で印象に残ったもの。 2009年は映画館で観る映画はもう少し普段観ないものにもチャレンジしようかと。そのくらいで今年はあまり目標はないです。■映画(映画館で観たもの)------------------------------ダークナイト 特別版 [DVD]…

 2008年まとめ

★…おもしろかったやつ。

 2008年12月

実家に帰るので未来日記。一年間お世話になりました。2009年もよろしくお願いします。 総括は1月に。 あ、12月はレンタル屋の太っ腹セールがあったのでDVDたくさん観ました。いろいろ繋がっていておもしろ。■2008年12月 【本】はやぶさ新八御用帳(5)御守殿お…

 イベントのお知らせ

…更新したらデザインくずれました。。さてお知らせです。 友人でもあり、詩人としても敬愛するアスパラガスさんの詩を朗読します。 ★ 朗読会〜アスパラガス、詩集。〜 ★ 日時:6月28日(土) 開場15:45 開演16:00start 料金:入場無料(投げ銭制)+1ドリン…

 2007年総括 映画

2006年はやたらネイチャーものを観ていたのですが、今年は自分で動物園に行ったりイルカと泳いだりしたもんで、あまり観る必要がなかったのかも。相変わらずライトな作品が多かったので、今年は少しずんとくるような作品も見ていきたいと思います。■ベスト(…

 2007年総括 本

20冊(内3分の1を翻訳もの)という目標だったのですけど、39冊(翻訳19冊)も読みました! どれも面白かった。わたしはやっぱり違う世界の話が好きかも。宮城谷昌光が多いのは実家から大量に借りてきたからです。「重耳」の最後に部下に拉致されるシーンが…

 2007年総括 アート・演劇・ライブなど(映画・本以外)

明けましておめでとうございます。大雑把なくくりですが、2007年を振り返ってみたいと思います。(ずいぶん行きましたね〜)■ベスト 1.ドミトリー・リス指揮、ウラル・フィルハーモニー管弦楽団(ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン) あまり馴染みのない曲もあったけど…

 12月分を追加。

まだ増えるかもしれないけど。12月何もしてないですね…。 (11月までの途中経過:映画:41(内DVD:16):小説:39(内翻訳:19))12月 映画:なし DVD:なし 小説:こころ(夏目漱石)/遠い声遠い部屋(トルーマン・カポーティ) マンガ:さくらん アート:ム…

 コスメバトン

奈緒ちゃんがやっていて、面白いので他の人のもいろいろ見て回りました。安いのと高いのを取り混ぜながら使っている人がやっぱり多いですね。今年に入ってからいろいろあって、そろそろきちんとケアをした方がいいのでは…と思って、親戚のおばさんオススメの…

 「こゝろ」夏目漱石著

以前勤めていた会社の年配の女性が、スターウォーズ・エピソード3を観に行った時に感想を訊いたら、ぽつりとこう言った。「アナキンはちょっと心が弱かったわね…」。そしてためいき。なんだかそんなことを思い出しながら、周囲の口先ばかりで弱々しい人々を…

 朗読会

自分のところに書くのを忘れてた…! 歌人の玲はる名さんとの2年越しの約束がようやく実現して、一緒にイベントができることになりました。映画館をお借りできたので、後半はオープンマイクもやります。白山神社のあじさいも、ぎりぎり見頃なはず…。キキ★ケケ…

 放送大学

特別講義 小説を訳す〜翻訳は何を伝えているか〜 担当講師:柴田 元幸(東京大学大学院教授)柴田さん話じょうず! 結論としては、言葉の正確さよりニュアンスを伝える方を大事にしているとのこと。翻訳はもって30年と言っていたのがなるほど〜と思いました。…

 2006年総括

■アート 1.伊藤若冲(動植綵絵)三の丸尚蔵館 2.Cocco東京公演 3.オラファー・エリアソン「影の光」 ■映画 1.なし 2.なし 3.プロミス(無極)、フラガール ■ビデオ 1.らくだの涙 2.ミトン 3.ベルヴィル・ランデブー ■本 1.『タイタンの妖女』 カー…