日日平安

再開しました

 長嶋有

『タンノイのエジンバラ 文芸春秋
収録作品:タンノイのエジンバラ/夜のあぐら/バルセロナの印象/三十歳
「夜のあぐら」が一番好き。姉妹が同じ時間を別々のベクトルで感じ取っていたのがいい。長嶋氏得意のパターンではあるけれど細やかだ。表題作が一番よくないと思うのだけど、他の収録作のタイトルがいまいちだからなあ。「三十歳」は冷めてはいるものの恋愛小説として読めた。これいいな。「バルセロナの印象」はあなた旅行に行ってきたでしょ、とツッコミたくなる感じ。
 
『猛スピードで母は』 文芸春秋
収録作品:サイドカーに犬/猛スピードで母は
最初に読んだ「ジャージの二人」が好きすぎて、かすんで見えてしまう(笑)。デビュー作、そして芥川賞受賞作なので仕方がないのだけど、小説っぽくて妙だなあと思う。というわたしの感想もヘンだけど。長嶋有の醍醐味はやっぱり父親にあるような気がする。


『パラレル』 文芸春秋
主人公の基本要素は「ジャージの二人」とほぼ同じ。著者は奥さんに逃げられた経験でもあるの?とか思ったり(笑)。ジャージよりもいくぶんか小説風になっている。本人はわりと一生懸命なのだけど、どうも社会とか女とか(自分以外のもの、いや自分自身も含め)、よくわからないままなんとなく付き合っているような、それでいてなんでなんで?とぼやいているような(ぼやいているだけの・笑)変な小説だ。20040928

ジャージの二人 集英社
ゆるゆるしていて、α波が出てきそうだ。プロのテニスの試合で、ロブの応酬(どちらもミスしないのでラリーが終わらない、目が離せない)、そんな感じ。あるいは工場での流作業に似ているかな。一見矛盾しているような”脱力した緊張感”。これは確かに新しいかもしれない。ちなみに長嶋さんとは某短歌のイベントで隣の席だったことがあって、「聴こえませんねえ」「全然聴こえませんねえ」と会話してしまった(笑)。うひゃひゃ。装画は大島弓子。20040928

『泣かない女はいない』 河出書房新社
収録作品:泣かない女はいない/センスなし/二人のデート
表題作はわりと好き。長嶋氏の描く場所がいつも自分の行動範囲と妙に被っていて、今回は特に自分と似た感じの主人公だったので、知らず寄り添う感じ。同居している彼が振り返って笑うシーンがよかった。あえていうけど、睦美さんみたいはひとはあれはあれで結構つらいんです!20051119
泣かない女はいない タンノイのエジンバラ 猛スピードで母は (文春文庫) パラレル ジャージの二人