結婚にまつわる2つの物語。『金の国 水の国』と『姉の結婚』
『金の国 水の国』岩本ナオ
おとぎ話のような可愛らしい物語に癒される。
ハイライトは結婚相手をどのように選ぶか尋ねられたB国の若者が答えるシーン。心を打たれるいいシーンだと思う。でもそれは案外難しい、と思ってしまう人もいるのでは。
とりあえず、この物語のヒロイン・サーラのように、いつも機嫌良くニコニコしてくれる人がいいのではないかと。この話の最後に、残ったビスケットをサーラが遠慮なくいただいてしまうところが好きだ。
おとぎ話的な展開を踏まえた上で、それでも何か許されてしまうような根源的な温かさが心地よい作品。軽やかに、染み込んでくる優しいマンガでした。おすすめ。
ストーリーと絵のバランスが絶妙。他の作品も読んでみたい。
『姉の結婚』西炯子
対して、こちらは重い(笑)。
地味かっこい美女・ヨリさんとクレバーな変態イケメン医師・真木のアラフォー不倫物語(なんだこれ)。
あらすじだけ書けば本当にうんざりする内容なのだが、そこは西炯子。読ませるなあと思う。リアルな部分をアンリアルな筆致で描くので、ついつい引き込まれてしまう。
妻帯者から好きと言われることは、やはり傷つくことなのだが、男の方はその辺よくわかっていないというのもリアルだと思う。真木は一途でクレバーな性格にも関わらず、中盤まで何がヨリを傷つけているのか気づいていないようだった。ヨリの方も自分を選べと言えないことで、自分で自分を傷つけている。
少し考えてしまうのは、ヨリのように結婚とか家族に幸せなイメージを持てない人が、じゃあ一体何を拠り所にすればいいのかと言えば、彼女の出した結論のように、もう愛しかない、と。前向きな意味ではなく、悲壮感漂う彼女の想いは、なんかわかる。そして愛しかないって、それは確かに打ちのめされるな、と。ある種の人間にとっては、愛されることも愛することも途方もなく難しいことなのだ。
でもヨリは、良くも悪くも弱い人だから、依存対象がそこにあれば結構うまくやれるのではないかと思った。流されっぷりが凄まじくて最終的には少し引いた・・・。ヨリがダメなのは愛されなかったからではなくて、弱さと向き合うことをせず、他人のせいにしてきたからだと思う。それはもう徹底して最後までそういう人だったな、と。妹ちゃんのように真木のように、最終的には戦って勝ち取って欲しかった。