村上春樹
- 『レキシントンの幽霊』 文春文庫
収録作品:緑色の獣/沈黙/氷男/トニー滝谷/七番目の男/めくらやなぎと、眠る女
「トニー滝谷」が映画化されたので、それを機に再読。初読のときの「うん、まあ」という印象ががらっとかわって、構成もいいし、凝りすぎず、わりといい感じの短編集だと思った。心の奥底に潜む暗いもの、恐怖や喪失などをテーマに、津波で友人を失った男の話などもあって、今読むと心なしかひんやりとする。最後の「めくらやなぎと、眠る女」は特に、この光の印象は学生の頃にはわからなかったんだろうなと思う。年を取るって深いかも。
再読。これにて青春三部作完了。回りくどい言質に”僕”の首をときどき絞めたくなるのはおいといて、とにかく哀しい話である。鼠の”弱さ”、素敵な耳の彼女の特別な世界、そういったものが失われた後、”我々”はどうしたらいいんだろうか。読み終えてゆるやかに絶望がやってくる。20051029
3部作の2作目という感じはする。飛ぶための助走ともいえるような。70年代という時代の空気感にどれだけ実感として迫れるかで、作品への寄り添い方が変わるような気がする。(20050814)
再読。改めて今読んでみると、アメリカの現代文学の翻訳本みたい。それにしてもこれがデビュー作とは。すごい傑作っていうより、すごい自信。↓この版はレイアウトを読みやすく変更したそうなのだが、左右の余白はもう少し欲しい。(20050721)