日日平安

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2004-01-01から1年間の記事一覧

 馬場あき子 『鬼の研究』 ちくま書房 ISBN:4480022759

作者は歌人で、能にも造詣が深く新作能の原作なども手がけている。一読では内容が実はよくわからなかったのだけど、そういうバックグランドを持った人に書かれているのがよくわかる特色ある本だ。鬼の言葉や元になったと思われる人々のルーツを探り、文学作…

 トルストイ 『人は何で生きるか―民話集』 角川書店 ISBN:4042089178

昔話の体裁を取りつつも、全編を通してキリスト教の精神に貫かれている。語りが上手いのでぐいぐい読める。とくに表題作がいい。基本的には、悪や暴力をなくすには許しの精神が必要で、幸せに生きるには慈しみの精神が必要であるということをうたったシンプ…

 筒井康隆 『家族八景』 新潮社

「七瀬ふたたび」のドラマがわりと好きだったので、ふんふんと思いつつ。どのキャラも欲望まみれだなー(苦笑)。七瀬は普通の女の子キャラかと思っていたら、わりと冷静冷徹でふんふんと思いつつ。うーん、よくわからないなあ。ちなみにドラマには筒井氏本…

 宮部みゆき

『あやし』 角川書店 怪談集。おどろおどろしさにはかけるが、宮部みゆき得意の江戸深川のひとびとが生き生きとしていて、語り口がうまくてのせられる。面白かった。『ブレイブ・ストーリー』 角川書店 力作なのだが、ファンタジーとしてはまだまだ作りこめ…

 ロバート・R.マキャモン 『スワン・ソング』 ISBN:4828857869

マキャモンは三大現代ホラー作家のひとりらしいです。第三次世界大戦後、世界が滅びたあと生き残った人々が悪と戦う話。悪というのがそんなに大きなものでもなく、ダークサイドの親玉みたいなキャラが、人間じみていて面白い。結局一番の悪代官はお前だー!…

 美輪明宏 『光をあなたに―美輪明宏の心麗相談』 メディアファクトリー ISBN:4889913483

時間つぶしに立ち読みをしたら面白くて全部読んでしまいました。とらばーゆの人生相談に答えたものらしい。相談者には悪いがこうのはバッサバッサと斬られなくっちゃね。痛快でした。美輪さんの人生観に基づいての回答なので、単なる人生相談というだけでな…

 姫野カオルコ 『すべての女は痩せすぎである』大和出版(文庫版は集英社)

文庫化に当たって加筆修正されているとのこと。わたしが読んだのは単行本の方。姫野カオルコをよく知らないので、ネットでどこかのちょっと頭がよくて気の利いた女性の書くエッセイみたいだなあと思う。内容にとりてて反論する気はないがサービス精神とまと…

 萱野葵 『段ボールハウスガール』 新潮社

収録作品:段ボールハウスガール/ダイナイマイト・ビンボー(文庫版は角川から別々に出ている) お金を盗まれてホームレスになった女性の物語。ハタチすぎたらガールはやめよう。ホームレスになるのはもちろん構わないけれど、衣食足りて礼節を知るという諺…

 ロード・ダンセイニ 『魔法使いの弟子』 荒俣宏訳 筑摩書房

錬金術師つながりで。錬金術師というのはマッドサイエンティスト(笑)のことだと長いこと思っていたのだが、どうやら魔法使いのようなものらしい。そして常に弟子募集中(笑)。物語は魔法使いとその弟子ラモン・アロンソとの影をめぐる攻防を描いているが…

 酒井順子 『枕草子REMIX』 新潮社

枕草子を解体し、再構成した本。どうも”現代だったらこんな感じ”という例えがわたしは気に入らないのだった。そんなのは読者の想像力に任せなさいって思う。そんなことしなくても枕草子は十分面白いでしょう。サービスしすぎ。まあ酒井順子が書きました、と…

 パウロ・コエーリョ

『悪魔とプリン嬢』 旦敬介訳 角川書店 単行本の絵の方が断然いいですね。村の言い伝えとか、格言的なものがよくできていて面白い。最後のプリン嬢の演説とか行動とか、意味はわかるけど、それでいいのかなと思った。プリン嬢は結局ヴィスコスを悪魔の町にし…

 ヴァージニア・ウルフ 『ダロウェイ夫人』 丹治愛訳 集英社

1920年代のロンドン、6月のある一日。描写が美しい。テーマのひとつには”老い”があるのだが、作品としては瑞々しいという印象が残る。基本的にはミセス・ダロウェイが主人公だが、Aの視界にBが入ると、Bの視界になってCを見る―という、いわゆる群像描写…

 荒俣宏 『ホラー小説講義』 角川書店

労作である。お疲れさまです。ホラー小説の概論で、ホラーというジャンルはきっと研究対象としてはまだまだ認知度の低い分野なのかなと思った。概論なのにとにかく文章量が多いので、なんだかよくわからないことになっている。おまけの雑誌や本などのイラス…

 保坂和志 『カンバセイション・ピース』 新潮社

なんかヘンだなーと思っていたら、それは親戚の家に行って、誰が結婚してどうとかそういう(あまり興味のない)会話に参加しているような感じがするからだった。正直言ってまどろっこしくて、本当にいつもそんなこと考えてるの?って作中の女の子じゃないけ…

 村上きわみ・歌 『fish』 ヲバラトモコ・画 ヒヨコ舎

短歌とイラストレーションのコラボ本。インクの匂いが漂ってきそうな印刷と迫力ある大きな文字で、開くだけで萌え、な本だ。正直短歌というものがよくわからないのだが(でも、この歌集は比較的わかりやすいのではないかな)、歌もひとことで言えば、萌え、…

 貫井徳郎 『慟哭』 東京創元社

主人公(=読者の視点)を引っ掛けるのはもちろん有りだけど、読者を引っ掛けるのは好ましくないと個人的には思う。落ち着いた語りには好感がもてる。それにしてもこの警察なにやってんの?とツッコミを入れたい。慟哭といって思い出すのは「ゴッドファザーⅢ…

 サン=テグジュペリ 『星の王子さま』オリジナル版 岩波書店 内藤濯訳

今さらと思いつつ初読み、面白い。これはオリジナル版で、出版時のものに近いのでしょうか。ちょうどタイ語版が手元にあったので比べてみると、絵の数も構成も、他にもいくつか細かいところが違っていて、なるほどと思ったり。

 伊坂幸太郎 『オーデュボンの祈り』 新潮社

改稿したそうだが、文章もディテールもまだまだ下手。でもそれを補って余りある魅力があり、かなり面白かった。ディテールの甘さは残念だが、それでも読後の気分が最高にいい。自転車を、漕ぎましょうっ…て、優午らぶりー。

 伊坂幸太郎 『ラッシュライフ』 新潮社

なるほど。表紙にもあるエッシャーの絵を時間軸に置き換えて小説に組み込んだ意欲作だ。惜しむらくは、個々のエピソードがなんだか薄いんだなあ。並列に戻してしまうとたいして面白くないだろう、これは。エッシャーの絵は近くでみると恐ろしく緻密なので、…

 伊坂幸太郎 『アヒルと鴨のコインロッカー』 東京創元社

伊坂氏はツボをよく心得ている。それを評価したうえで、でもやっぱりこれはあまりうまくないのではないか、と思う。好みの問題だけど、わたしとしてはまずは洟垂れ小僧を主人公にするのはやめていただきたい。あとブータンに抱いているわたしのイメージを壊…

 ヘンリー・ミラー 『クレイジー・コック』 谷村志穂訳 幻冬舎

わりと支離滅裂なんだけれども(他と比べると筋が通っている方らしいが)、解説から読むとそれそれピースなんだなと思う。ひたすら苦しそうだ。

 姫野カオルコ 『整形美女』 新潮社

絶世の美女が自分をブスだと思い込んで醜く整形するという、けんか売ってんのか、コラという話。そこがこの本の醍醐味なのだけど、整形前が卑屈でもないし魅力的なので、いまいち説得力がなくて残念。同じ女としては意味不明な存在だ。対比として置かれてい…

 衛慧(ウェイフェイ) 『上海ベイビー(上海宝貝)』 訳:桑島道夫 文芸春秋

中国では発禁処分を受けたとあるが、ほとんどの国では問題ないだろう。とにかく上海女性というのがポイントであり、それに尽きる。日本の小説では野心があり自我の強い女性が主人公というのはあまり読んだことがなかったので新鮮だった。普通に読んでも面白…

 黒田晶 『世界がはじまる朝』 河出書房新社

これも「博士の愛した数式」と同じ病気を扱っている。すげーいい加減でしたが。主人公が病気(しかも外国人の女の子)というのが変わっているかな。ハタチすぎには耐えられないひとも多かろう…。ティーンエイジャーが本当の愛を見つける話。改めて愛と言われ…

 森絵都 『DIVE!!』 全4巻 講談社

泣くと聞いていたのだが、その意味がなんとなくわかる読後感。中高生が飛び込みでオリンピックを目指すという話だが、スポ根ではなくてこれは自分探しの物語。若いっていいなあ。ウォーターボーイズでも思ったけれど、若く鍛えられた肉体にはそれだけで価値…

 森絵都 『つきのふね』 講談社

児童文学というのがまだよくわからないのだけど、対象は中学生ぐらいか。十代半ばの生意気で中途半端な道徳観念がリアル。こういうこと言う子いたよなー。ハタチ過ぎてもまだ結構いるけど。うだうだする子どもたちに「そこへなおれ!」とか言いたくなってし…

 北野勇作 『イカ星人』 徳間デュアル文庫 ASIN:4199051147

斜め読みをしていたら話がわからなくなってしまったのだが、どこまで戻ればいいのかもわからないので、最後まで斜め読み。よくわからなかった。基本的には「どーなつ」と同じ話ではないかと思われた。後になってじわじわどーなつ化現象に襲われているので、…

 北野勇作 『どーなつ』 早川書房

人工知能ならぬ人工知熊がかわいい。小分けにされた章が錯綜していて、まあ微妙なというか、境界をなくしてしまった曖昧な世界が展開している。タイトル通り、”ドーナツの穴”的な作品なんだろう。表紙は西島大介氏。

 小川洋子 『沈黙博物館』 筑摩書房

おどろおどろしいイメージをしていたら、案外ライトで読みやすかった。さみしいような暖かいような、不思議な印象の物語。わりと面白かった。でもマニアックな博物館なのだし、もっとカリカリしていた方がいいかなあ。佐藤亜紀が同じ題材で書いたらすごそう……

 小川洋子 『貴婦人Aの蘇生』 朝日新聞社

思わずにんまりとしてしまう、楽しい読後感。アナスタシアとニコの、わが道をひたすらゆく姿が気持ちいい。ニコみたいなひとを恋人にしたいなあと思ったけれど、わたしには捕まえられないだろうなあ。