日日平安

再開しました

 ゴーゴリ 『外套・鼻』 岩波書店

ドストエフスキーが「われわれは皆ゴーゴリの『外套』の中から生まれたのだ!」と言っている。それで解説を読むと難しげなんだが、気にせず読む。かなり面白い。ひとくちに不条理といってもユーモアがあるので、とほほな話という感じ。それにしても主人公が…

 宇野千代 『行動することが生きることである―生き方についての343の知恵』

つらつらと書いている感じがいい。可愛いひとだなと思う。考え方はわたしとかなり似ているので、ちょっと気恥ずかしかった(笑)。なにが似ているって、自分を褒める癖があるところが…。

 レベッカ・ブラウン 『体の贈り物』 新潮社(単行本はマガジンハウス)

末期のエイズ患者のホームケア・ワーカーである女性たちと、その患者との交流を淡々と描いた連作集。たとえば朝、窓を開けて思いがけず天気がよかったとか、そういうささやかな歓びのある作品だ。HIV感染者は日本でも増えているし、もっと身近なものとして捉…

 『世界むかし話 ロシア』

わたしの感覚からすると、結構こわい。カエル姫というのが、わたしの探していた「チワンのにしき・太陽のむすめ」ではないかと思うのだけど、どうかな。蛙の姿の女の子を守ってあげる王子様、という図がステキ。というか、カエルの皮を脱いで置いておくとい…

 佐藤多佳子 『黄色い目の魚』 新潮社

渚ボーイ・多恵子ガールみたい。木島くんと村田さんのお互いの視点からの物語。絵を描く人間と絵を愛する人間が出会うというのが奇跡だ。木島くんかわいいなあ。でもテッセイの存在が一番よかった。子供たちの一人称で書かれているもんで、文調は乱暴だが心…

 絲山秋子

『逃亡くそたわけ』 中央公論社 精神病院から脱走し、九州を半周するロードノベル。たぶん鬱とか躁とか大変なんだろうけど悲壮感がないのがいい。やっぱり生きて行かなくちゃいけないわけだし。もし九州に行ったら”いきなり団子”食べるんだろうな。絲山本の…

 『Little tern(リトル・ターン)』 ブルック・ニューマン作、五木寛之訳、リサ・ダークス絵 集英社

水彩の絵がきれい。プロローグの後の”リトル ターンがみずから語った物語”という言い回しがアイヌの物語と同じだなあと思った。内容の良し悪しはともかく、面白みには欠けるような。これって時間のあるときにゆっくりじっくりことこと大らかに読まないと意味…

 多和田葉子

『容疑者の夜行列車』 青土社 主語が二人称なので、”あなた”とは一体何者なんだろうと気になるのだが、読み進めて行くとおぼろげに見えてくる。ある歌人の方が、最近のひと(若手の歌人)は「自分」→「宇宙」という視点は持っているのだけど、間の「世界」が…

 リスト 面白かった本 

※ハテナをはじめてから読んだ本(再読含む)です。 闇の左手 (ハヤカワ文庫 SF (252))/ ジェーン・エア (上) (新潮文庫)/ 自負と偏見 (新潮文庫)/ 朝びらき丸東の海へ―ナルニア国ものがたり〈3〉 (岩波少年文庫)/ 赤毛のアン―赤毛のアン・シリーズ〈1〉 …

 中島たい子 『漢方小説』 集英社

最近の純文の若い人は文章が上手いなと感心していたのだけど、このひとは下手。この内容なら半分で書けって思う。エッセイ風で等身大、良くも悪くも。わたしのテーマって…と思いつつその素直さが憎めない。作者はたぶん可愛いひとなんだろうな。

 佐藤亜紀 『天使』 文芸春秋

いつものように、一読ではほとんど内容が掴めないのだが、それでもやっぱり面白い。

 江國香織

『神様のボート』 新潮社 最近読んだ彼女の本の中では一番いい。あとがきには「狂気の物語」とあるけれど、わたしにとしては一番リアルな小説であった。これは相手の男性が出てこないからだろう。16年間漂いつづけたボートのたどり着く先は始まったときから…

 絲山秋子 『イッツ・オンリー・トーク』 文芸春秋

収録作品:イッツ・オンリー・トーク/第七障害 読みやすかったけれど、だから何?、という感じもする。文字通り”ムダ話”ではある。それでもイッツ〜は個性が立っている。が、第七障害は、うまくまとまっているだけでちっとも面白くない。なんだか陳腐という…

 絲山秋子 『海の仙人』 新潮社

主人公はなぜか宝くじが3億円当たっている。うらやましい…。しかし物語にはほとんどかかわりがない。感触は悪くない作品。しかし、書き方としては、ゴールに向かってではなく、スタートからとにかく走り出してみた感じだ。20041023

 絲山秋子 『袋小路の男』 講談社

収録作品:袋小路の男/小田切孝の言い分/アーリオ オーリオ だんだんよくなって来ているので、今後も読み続けると思う。「袋小路の男」はとてもいい。それぞれ身勝手な言い分というものはあるものだ。ただし正当化しないからいいのであって、「小田切孝の…

 阿部和重 『シンセミア』 朝日新聞社

回りくどさだとか、バカバカしさだとかは、言ってしまえばそうなんだけど、かろうじて文学的資質によって書かれているというか、なんというか。力作ではある。エンターテイメントにしてしまえばもっと面白いだろうに、そうしないところが阿部和重というひと…

 井上荒野 『しかたのない水』 新潮社

吉田修一の「日曜日たち」を思い出した。フィットネスクラブを基点にした群像劇の連作。普段見ないようにしているもの、考えないようにしているものの蓋を開けちゃったよ…という感じだ。恐ろしいような気もしたけれど、実際にはわたしたちはこのような日々を…

 池澤夏樹 『イラクの小さな橋をわたって』 光文社

911からイラク開戦のあいだ、という絶妙な時期に旅したときのイラクの印象が書かれている。池澤氏の文章は初めて読んだのだが、とても優しい感じがして、素直にいい国だなと思った。彼らは今生きているのだろうか。この戦争を止められなければ、次も止められ…

 メモ 学習研究社 現代子ども図書館

チワンのにしき・太陽のむすめ(タイトル思い出しました) http://www9.plala.or.jp/clue/mrspw/kodomo_tosyokann.html http://www.fukkan.com/vote.php3?no=10466 http://www.gakken.co.jp/kyouikusystem/p3.html#2001※ ※子供の頃に、これを読んでいたので…

 ガラクタ捨てれば自分が見える―風水整理術入門

最近あまりに雑念が多いので、持ち物の整理をしようと思っていたら偶然目に入ったので思わず購入。ものを捨てればこんなにいいことが、というのがこれでもかと書いてある。最後には排便の話にまでなって、これ全部を実行…となると、ちょっと強迫観念的ではあ…

 地図「東京を歩く」

ミニムックといった地図+観光案内のような感じ。散歩にテーマを絞ってあるので、見ていて楽しい。地図も写真も綺麗だし、構成もなかなかいい。案外軽いので持ち運べそうだし。

 アンドレイ・クルコフ 『ペンギンの憂鬱』

ペンギンのミーシャにもえーとか言っていたが、悲しい話である。何が悲しいかといえば愛がないのが悲しい。信頼とか無償とか、そういったものが普通に流されている。舞台はウクライナのキエフで、ソビエト連邦崩壊後の彼らの世界は、わたしたちの世界の法則…

 西島大介 『世界の終わりの魔法使い』

河出書房新社/ゆるい。このゆるさをどうとらえるかって何かの踏絵みたいだ。西島さん自身が不思議な立ち位置で活動しているのだけど、こう読み手の方も作品から不思議な距離を感じる。全体の印象としてはちょっと可愛すぎるかな。凹村戦争の方が好きという…

 長嶋有

『タンノイのエジンバラ』 文芸春秋 収録作品:タンノイのエジンバラ/夜のあぐら/バルセロナの印象/三十歳 「夜のあぐら」が一番好き。姉妹が同じ時間を別々のベクトルで感じ取っていたのがいい。長嶋氏得意のパターンではあるけれど細やかだ。表題作が一…

 澁澤龍彦 『唐草物語』

河出文庫/収録作品:鳥と少女/空飛ぶ大納言/火山に死す/女体消滅/三つの髑髏/金色堂異聞/六道の辻/盤上遊戯/閹人あるいは無実のあかし/蜃気楼/遠隔操作/避雷針屋 澁澤氏は初読。ほうほう、こういう感じのひとなのかーと思う。エッセイ風に始まり…

 ほしのこえ

作画・佐原ミズ 原作・新海誠/キキメモによると、自主制作アニメーション「ほしのこえ」の漫画化作品である。で、アニメの続編が「雲のむこう、約束の場所」と続いているらしい。久しぶりにラベル買いをしたらこれは失敗かなと思う。本編不在(あるいは世界…

 村上春樹

『レキシントンの幽霊』 文春文庫 収録作品:緑色の獣/沈黙/氷男/トニー滝谷/七番目の男/めくらやなぎと、眠る女 「トニー滝谷」が映画化されたので、それを機に再読。初読のときの「うん、まあ」という印象ががらっとかわって、構成もいいし、凝りすぎ…

 藤崎竜 「Worlds―藤崎竜短編集 」

集英社(ジャンプコミックス) わたしは藤崎竜の漫画は全部買うと決めているのだが、あまり本気でもないので全部揃ってない。いちおうこの本を買った以上は最後まで付き合うぜという心意気だけはある。彼のデビュー作は本当に下手くそで、彼をデビューさせた…

 配色アイデアミニ帳

発行エムディエヌコーポレーション:配色ブックは数あれど、ここまでコンパクトでかわいいのは見たことがなかったので衝動買い。A5の変形サイズで持ち運びにもいい。見本のサンプル画像がどれも素敵で、眺めているだけで楽しい。

 『CUTOUT! 切り絵の本』 雄鶏社

前半は若手作家の井上玲・くまだまり・藤野真由子のデザイン、後半にその型紙があり、ひとつで鑑賞と手引き書を兼ねている。ムックなのでそこそこの値段と厚みで、デザインが素敵なのでよい出来の本だと思う。藤野さんのファンで、手元に置いて鑑賞できるよ…