『歌行灯・高野聖』泉鏡花
泉鏡花は繰り返し読むほどに、味の出てくる作家だ。文体は慣れるまで読みづらいが、わりと慣れる。今回この本を読むのは3回目でほぼすらすらと読めたものの、作品によっては部分的に引っかかってしまう。だいたいにおいて、主語が掴みづらい。
それを差し置いても、この吸い付いてくるような、引きずり込まれるような文体はもはや快感としかいいようがない。身体の中で、まるで音が反響しているよう。
最初のページから最後のページまで読めば小説は終わる。普段当たり前にそういう読み方をしているわけだけど、そういう当たり前がなんだか通用しない。幾重にも階層があって、息苦しくて、でもどんどん潜っていってしまう。そして何もかもが美しい。
- 作者: 泉鏡花
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1950/08/15
- メディア: 文庫
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