本
6年にわたって雑誌に連載された作品とのこと。宮城谷氏の端正な仕事は連載形式によく合うと思った。淡白ではあるが、端々まで隙がなく、しずかな緊張感を持って全5巻を一気に読んだ。わたしにとっては、疲れたときにでも読め、かつ楽しませてくれる癒し小…
なぜか、わたしのなかでは少し前に読んだ「闇の左手」と綺麗に対をなした。つまり、輪郭はあるが、核心がないということになるだろうか。腹の中に熱い石を抱えていたような「闇の左手」に対し、「わたしを離さないで」は石だらけの道を素足で歩いているよう…
泉鏡花は繰り返し読むほどに、味の出てくる作家だ。文体は慣れるまで読みづらいが、わりと慣れる。今回この本を読むのは3回目でほぼすらすらと読めたものの、作品によっては部分的に引っかかってしまう。だいたいにおいて、主語が掴みづらい。それを差し置い…
※文藝掲載のものを読みました。正直、これを本にするのかーと。量的に。あと2編ぐらい入れればスカスカとか言われないかもしれない。キュッとしたいです。キュッと。(ナオコーラさん的キメ台詞を)行開けしちゃうのはキメっぽいだけに格好悪く感じます。絶…
一言で言うと、”奇妙な”小説だ。掴みどころがない、というより、輪郭がない。ぼやけた二つの影のような塊が、風雪のなか、ただ白い世界を移動している。核心は常にある。愛に似ているが、それをそのまま愛と呼んでいいのかわからない。両性具有の異星人であ…
面白くなってきたと思うとすぐに場面転換してしまい、全体的に気分が盛り上がらないまま終わってしまった。ディテイルは面白いのだけど。。主人公ふたりだけに絞っていたらもう少し入り込めたかも。天上人の描き方がわたしにはしっくりこなくてこれは致命的…
あまり上手い言葉が思いつかないのだけど、とにかく面白かった。わたしが井伏鱒二を好きなのは、陽気さと切なさのバランスが絶妙で、笑いながら目のはしで泣いてしまうようなところ。こういう心地の良い軽妙な文芸小説を読める機会は意外と少ないように思う…
サーカスとヅラの話を読むかぎりでは、前作より数段面白くなっており、これはずっと書いて欲しいなと思ったのだが、最後の「女流作家」を読んで少々不安に。ネタを探すのが大変そうだ。空中ブランコ (文春文庫)作者: 奥田英朗出版社/メーカー: 文藝春秋発売…
ある意味、アムステルダムというタイトルがすべての作品だが、皮肉にもアムステルダムがアムステルダムであるがゆえに、傑作になりえなかった作品ともいえる。中盤、物語が転換を迎える場面で、”友情の不均衡”という言葉が出てきたとき、思わすクスリと笑っ…
カーシュと続けて読んだら、どちらも短編集のせいか(他にもいろいろ共通点があり)、なんだか似ていた。余談だが、カーシュの中には宮沢賢治のとある童話そっくりの話があった。収録作は雨・赤毛・ホノルル。すべて南洋を舞台にした作品だ。赤毛、ホノルル…
少年探偵団シリーズの記念すべき第1巻。全26巻ですって。うっかり集めそうになり、いやいやいや図書館で借りてこよう…と自分を諌め中。この面白さっていうのは、謎解きの面白さではなくて、小林少年のほっぺだったり、妙にインパクトのあるピッポちゃんだっ…
今年はサクッと。※順不同で印象に残ったもの。 2009年は映画館で観る映画はもう少し普段観ないものにもチャレンジしようかと。そのくらいで今年はあまり目標はないです。■映画(映画館で観たもの)------------------------------ダークナイト 特別版 [DVD]…
<えんぴつは書きたい鳥は生まれたい> 本としては初めて読む川柳。”サラリーマン川柳”ぐらいしか知らなかったので、「私」を中心に置いたその自由さに驚く。女のひとのやわらかさと底暗さが気持ちよく混在している。巻末に本書及び川柳に対する座談会が付い…
イギリスの児童文学。大勢の人が選挙に行かなかったために、健全健康党が勝利を収め、チョコレート禁止令が発令されてしまう。禁止の仕方は徹底的で、チョコレート探知機が町を走り、違反したものは厚生施設へ送られる。チョコレートを何かに置き換えると、…
将棋界を舞台にしたノンフィクションだが、小説のようでもあり、冒頭とラストは少しうるうるしてしまう。将棋は与えるだけで、何も奪わないという、何十年も経ってからの著者(将棋連盟発行の雑誌編集長だった)の結論に重みを感じる。将棋界に興味があれば…
やっと読了。時間はかかったが大変面白かった。物語の骨格はシンプルなのだけど、キャラクタの立たせ方が上手い。会話文が特に素晴らしく、そこだけは原文でも大丈夫。「大つごもり」と「やみ夜」が好き。「ゆく雲」の非モテ男の話は笑えた。意外と変わらな…
無理やり例えるなら舞城からセンチメンタルな部分を全部抜いて、どこかのシーンを抜き出したような感じ。似てるってわけではなくて形として。長編ならまた読んでみたいかも。ウラジーミル・ソローキンの「愛」を思い出した。
なるほど伊藤比呂美だなと思う。やっぱり地獄の話の「頼光と智光」が一番好き。ちょっと泣きそうになった。 樋口一葉の現代語訳もあった。原文でぜんぜん読めるけど、読み比べしてみるのも面白いかも。そういえばねちっこさ(笑)みたいな部分は多和田葉子と…
時々最初の数ページでぞわぞわと何か予感のようなものが来ることがある。多和田葉子以来久しぶりにやって来た(笑)。まず文章がイイ。映画を愛する根暗な美女おがたQは、目の前に現れる不幸のサインをことごとく見逃していき、その原因がたぶん「ちょっと…
色々不満も無くはないのだけど、オチが予想以上にすばらしかったので許す(笑)。相変わらずキャラ勝ちだな。もう少し骨太に、もう少し深く、もう少し情熱的になれたら、といつものように伊坂さんのことを思う。
これだけ読み残していたので、ようやくすっきり。ここで改めて思ったのは、十二国記というのはもう世界設定がべらぼうに面白いのだけど、物語のなかで一貫しているのは、「いい王とは?」というのをずっと問答している。ひいては人間(それぞれ個々人が)が…
再読。未だわたしの中では宮部みゆき一番の傑作。カードも怖いが、ここに出てくる女性たちの年代になってみると、彼女たちの孤独や不安がより浮かび上がってくるように思う。それにしても無駄がほとんどなくて、一歩引いてみれば、自分も駒のひとつとしてこ…
なんか、間違えて消してました…。 物事の大小に関わらず、良心を守り抜くには勇気がいる。そして知識と想像力も必要。彼女の常に物事に丁寧に対峙する姿勢に打たれた。序文はたいへんわかりやすく、かつ素晴らしい。これだけだけでも読む価値がある。 以下引…
個々の存在は連綿と続く何かの一部であり、知らないうちに利用されていることもある。気づいたときは恐ろく、虚しくなるものだと思ったけれど、そうじゃないらしい。ものすごく悲惨でものすごく幸福な物語だった。
出久根育の絵が恐いのだが、中身はふつうに優しい物語だった。なぜそんなにギャップがあるのかは不明。ルチアさん作者: 高楼方子,出久根育出版社/メーカー: フレーベル館発売日: 2003/05メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 17回この商品を含むブログ (12件)…
戦争の世紀を犬の視点で切り取って断片的に重ねていくという、実験的な小説。犬や登場人物の行動を作者が好き勝手に解説しているような感じ。ひとことでいうと、へんな小説だ。
キリスト教圏の人間でないと、すごさが実感としてわかりずらい「謎」ではある。どうでもいいよ。ストーリーテリングが面白いのだろう。いくつか観に行きたくなった絵や場所などはあるのだけど、もうちょっと特にダ・ヴィンチについての記述があるとよかった…
冒頭からオチまで、心鷲掴みにされっぱなし。「パニくるな!」とりあえず覚えておきたい台詞だ。銀河ヒッチハイク・ガイド (河出文庫)作者: ダグラス・アダムス,安原和見出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2005/09/03メディア: 文庫購入: 39人 クリック:…
とにかく柴田ゆうの挿絵が愛らしくて、それによって面白さ30%ぐらいUPしていると思う。絵がやばい。物語は文章もストーリーもほんとたいしたことないんだけど(失敬!)、この邪気のない可愛らしさとおおらかさになんだかほわわーんとあてられた。いや面白…
書店くじに当たった(100円)ので、それで買ってきました。基本がだいじよね。。おかっぱの眼鏡っこが「おめでとうございます!」とにこやかに笑ってくれて悩殺されました(笑)。奈緒ちゃんも眼鏡で仕事するとよいよ!